長年にわたり市民に親しまれてきた「神戸市立須磨海浜水族園(スマスイ)」と、日本の白砂青松百選にも数えられるほどの美しい松林。このふたつの象徴を舞台に、大規模な再整備計画が動き始めた。水族館の建て替えを契機として、公園全体を新たな憩いの場へと生まれ変わらせるプロジェクトだ。今回の計画では、従来の水族館の魅力を引き継ぎながら園地部分の整備や景観保全を進め、さらに地域住民と来園者がつながる仕組みづくりが求められた。
その中で大きな役割を担ったのが阪神園芸。松林の保存や植栽計画、園地の再整備に加え、公園全体の運営まで、一貫して携わることに。自然と人とをつなぎ、長く愛される場所を未来に残していく。その挑戦の現場で活躍する阪神園芸のメンバーに話を聞いた。
守り、育み、
未来へつながる景色に
「主に造園工事をしています。わかりやすく言うと“みどりのものづくり”ですね」そう語るのは造園工事部の安田知圭良さん。取材時に担当していた現場は、須磨海浜公園の水族館建て替えに伴う園地工事。緑道の整備もあわせて新たな公園をつくるプロジェクトだ。
この工事で特に重要なのは園内の松の保存。約7割の松を保存するというミッションを受け、その一部を京都の圃場に移植し、2年間大事に管理したそう。「今日はその大事に世話してきた松を故郷(ここ)に植え戻す作業でした」と安田さんは微笑む。
造園工事は通常、建築や土木工事が終わったあとの最後の仕上げ、まさに花を添える作業だ。その仕上がり具合で施設全体の完成度も左右する。樹木を植えた直後は、環境の変化によって衰弱することもあり、観察やケアが欠かせないと言う。「植木は建設材料なのですが、ブロックやサッシと違って生き物だから扱いが難しい」と安田さん。しかしその一方で、完成したときがスタートで、その後の成長を未来にわたって見届けれるのも魅力。「大事に守った松がこれからどのように成長をしていってくれるのか。自分が親になったとき、子どもを連れて来ることができれば嬉しいですね。そのときは松の成長を子どもに自慢しながら、造園という仕事の面白さを伝えたいです」と笑顔で語ってくれた。
守り、育て、つなぐ。
公園と人の未来をつくる
阪神園芸の事業のなかでも、少しユニークなのがFM事業部だ。施設や公園の管理・運営を担い、その内容は場所によって様々。FM事業部の山隅季尋さんは「公園ができた後も、『パークコンシェルジュ棟』を拠点に松林や園地の管理、そして来園者の方へのおもてなしを続けています」と語る。園内には神戸須磨シーワールドやホテル、レストラン、ショップが集まる「松の杜ヴィレッジ」もあり、毎日多くの人でにぎわっている。
「パークコンシェルジュ棟」には市民が利用できるホールもあり、松ぼっくりを使ったリースづくりやワークショップも定期的に開催。公園の象徴である松林を未来へつなぐために「須磨松林クラブ」も立ち上げ、地域の方と一緒に松葉掃除などの活動を続けているそう。自然に触れながら、人と人との交流が生まれるのも魅力のひとつだ。
「休日の晴れた日などはとても多くの方が訪れて、公園全体がにぎわいます。小さなお子さんからご年配の方、外国からの観光客まで、幅広い方々が楽しんでくれるのを見ると、本当にうれしく思います」と山隅さん。自然やみどりを通して、公園が誰にとっても心地よい居場所になれるように――そんな思いを胸に日々の管理に取り組んでいる。
会議室のレンタル管理なども行う、公園の窓口的存在
















