絶景の、その先にある仕事
伊豆パノラマパークの山頂に立つと、目の前には富士山と駿河湾が広がる。風が抜ける。空が近い。時間の流れまで、少しゆるやかに感じられる場所だ。
この風景を、もっと心地よく、もっと魅力的な場所へ。そんな想いから、阪神園芸によるプロジェクトが動き始めた。
きっかけは、2022年。パーク全体のリニューアルにあたり、植栽計画の策定から改修、その後の運用まで含めた相談が阪神園芸へ寄せられたという。関西のイメージが強い阪神園芸だが、現在は関東エリアをはじめ、全国各地で“人が過ごす空間”づくりに携わっている。今回の伊豆パノラマパークも、そのひとつだ。
レストラン棟やロープウェイ入口のある「山麓エリア」では、山頂への期待感が高まるような、少し特別なリゾート感を意識。一方、富士山と駿河湾を一望できる「山頂エリア」では、“景色が主役になること”を大切にしながら植栽計画が進められた。
季節ごとにテーマカラーを設けつつも、花を主張しすぎることはしない。あくまで景色に寄り添い、その季節らしさを自然に感じられること。絶景を引き立てながら、そこに訪れる人の時間まで心地よくなるような空間が目指された。
完成した風景だけを見ると、もともとそこにあったように感じられるかもしれない。けれど、その“自然さ”の裏側には、多くの工夫と試行錯誤があった。
この場所らしさを、
守りながら
この工事に携わったのが、造園工事部の高木陸さんだ。「人が実際に使っている風景を見ると、“やってよかった”と思うんです」。そう話す彼にとって、今回の現場は特に印象深いものだったという。
伊豆パノラマパークの魅力は、人工的につくられた空間ではなく、山の自然と景色そのものにある。だからこそ整備をしながらも、“もともとそこにあった風景”に見えることが何より大切だった。「既存の景色となじませることを意識していました」。
ただ、その環境は想像以上に過酷だった。山頂エリアへの資材運搬にはモノレールを使用。中高木は2〜3本ずつしか運べず、大きな木になると1回で1本しか運べないことも。往復には約45分。少しずつ運び上げていくしかなかった。
さらに悩まされたのが、山頂特有の天候だ。「施工期間中、雨が降らなかった日は一日もなかったです(笑)」。風が強い日はロープウェイが止まり、途中で全員下山しなければならないこともあった。雨でウッドデッキを汚さないよう養生をしながら、足場の悪い山の斜面で作業を進める日々。それでも、高木さんたちが優先したのは“効率”ではなく、“この場所らしさ”だった。
完成後、多くの人が景色を楽しみ、写真を撮り、それぞれの時間を過ごしている。その風景を見た瞬間、「ようやくこの場所が完成した気がしました」と高木さんは振り返る。
空間は、整備しただけでは完成しない。人が訪れ、時間が流れ、思い思いに過ごして、はじめて“風景”になっていくのだ。

変わり続ける景色に寄り添う
工事が完了した後も、季節は巡り、風が吹き、雨が降るたびに、植物も景色も少しずつ表情を変えていく。その変化に寄り添いながら、空間を整え続けるのが維持管理の仕事だ。
伊豆パノラマパークでは、年に3回ほど季節に合わせた植栽の入れ替えを行っている。ただ、山頂という環境は想像以上に厳しい。
「暑い時期は花がもたなかったり、寒い時期は凍ってしまったりするので、植物選びは本当に難しいです」。そう話すのは、リニューアル工事の頃からこの場所に関わってきた、施設管理部の早川理佐さん。
風が強い場所では、あえて花を植えず、周囲の景色を活かす判断をすることもあるという。富士山を望む人気スポットだけでなく、散策路沿いの小さな植栽にも目を配り、現地の植栽管理担当者と意見交換しながら、そこに合った景色を整えていく。
「通りがかった方に『ご苦労さま』って声をかけてもらえると嬉しいですね」と早川さん。
高木さんが“つくる側”なら、早川さんは“育てる側”。役割は違っても、二人に共通していたのは、「人が過ごす場所を支えている」という感覚だ。
高層ビルが立ち並ぶ都市の中でも、人は自然と“みどり”のある場所へ集まっていく。木陰で休む人、ベンチで会話をする人、花を眺める人。そんな風景のそばには、必ず誰かの手入れがある。「やっぱり外には、楽しいと思える魅力がある」そう微笑む早川さん。完成して終わりではなく、その後も季節とともに変化する景色に寄り添い続けること。人が過ごして、風景になる。阪神園芸は、その風景を支えている。
















