すべては、
話を聞くことから始まる
「営業の仕事は、ゼロからのスタートです」。そう話すのは、営業本部営業部の大谷公亮さんだ。
お客さまと対話し、まだ形になっていない思いや課題を受け取り、構想を少しずつ形にしていく。デザイン室へつなぎ、設計へ落とし込み、工事へ引き渡す。そして完成後も維持管理へとつなぎながら、必要に応じて伴走する。営業の仕事は、0を1にすることでもあり、0から100まで関わり続けることでもあるという。
もともとスポーツ施設部で現場に立っていた大谷さんが、営業で最も大切にしているのが「傾聴」だ。「営業はまず、お客さんの話を聞くことから始まります。」要望の奥にある背景や不安をくみ取ることが、その後の設計や工事にもつながっていく。
伊丹北高等学校のグラウンド整備も、そんな対話から始まった。兵庫県の事業として「ブルーグリーンシステム」を導入する学校が選ばれ、その一校に伊丹北高等学校が選定された。校長先生は当時をこう振り返る。「前任の校長のときに決まっていたのですが、“就任早々大変なお役目をいただいたな”と思いました。」体育大会や部活動への影響はないか——生徒ファーストで考えながら調整が進められていったという。
営業は何かを売る人ではなく、未来を一緒に考える聞き手。目に見えるグラウンドが生まれる前に、目には見えない対話の時間がある。
と中村薫事務長(写真左)※2026年2月取材当時
社内外をつなぎ、
企画を育てる
対話から生まれた構想を、具体的な形へと育てていく。その過程で営業が担うのは「つなぐ」役割だ。お客さまの思いを社内へ、社内の専門性をお客さまへ。双方の間を行き来しながら、企画を少しずつ磨いていく。
その象徴となったのが、オランダ発の「ブルーグリーンシステム」だった。雨水を地中に溜め、毛細管現象によって水分を吸い上げることで表面温度を抑える仕組みで、日本ではまだ導入事例がない新しいシステムだった。
大谷さんは理解を深めるため、オランダへ渡り、実際の施工現場で研修を受けた。現地での研修で強く印象に残ったことがある。このシステムは、わずかな誤差が仕上がりを左右するという点だ。グラウンド全体の水平が取れているか、パーツにズレがないか。少しの違いが結果に大きく影響する。「でも、阪神園芸の技術力ならやれると思いました」と、大谷さんは当時を振り返る。
もともと水はけが悪く、雨のあとにはぬかるむグラウンド。さらに夏場は遮るものがなく、暑さへの対策も必要だった。先生方はWBGT(暑さ指数)を測りながら、生徒の安全を守る工夫を続けていたという。実績のない新しいシステムをどう伝えるか、調整は簡単ではなかっただろう。それでも大谷さんは現場の先生方の声を受け止めながら説明を重ね、少しずつ理解を広げていったという。営業が社内外をつなぐことで、新しい選択肢が現実のものになっていった。
完成してからが、
本当のスタート
グラウンドが完成したときのことを、大谷さんは「率直にうれしかった」と振り返る。青々と広がる人工芝。その上で生徒たちがのびのびとプレーしている姿を見て、「この設備をもっと広めていきたい」と自然に思えたという。
引き渡し前日は生憎の大雨だったが、以前ならぬかるんで使えなかった場所で、問題なくサッカーができた。事務長先生も「すごいシステムだなと思いました」と話す。夏の暑さについてはこれからだが、「この夏が楽しみ」という期待の声も聞こえてきている。
しかし、大谷さんはこう言う。「営業の仕事は、完成して終わりではないんです。」グラウンドは、使い続けることで状態が変わっていく。だからこそ設置後も現場に足を運び、プロの視点から気づいたことを伝える。必要があれば相談に乗り、改善へとつなげていく。
実際、学校からの問い合わせには迅速に対応し、細かな要望にも耳を傾けてきた。その積み重ねが少しずつ信頼関係を育てている。
校長先生は「環境が人を育てると言われますが、人が環境を整えることも大切だと思います」と語った。このグラウンドがこれからどのように使われ、どんな時間を刻んでいくのか。それは学校や地域の手に委ねられている。営業の仕事は目立たない。けれど、誰かが安心して使える場所を支え続ける。目に見えない仕事が、未来の風景を支えている。
















