みどりに囲まれて働く、暮らす。
緑化装飾部

みどりをもっと身近に、気軽に

 造園工事や緑地管理に比べてあまり知られていないのが、緑化装飾部の仕事だろう。オフィスや商業施設など、屋内の観葉植物のレンタル業務を中心に、法人向けの花の手配や商業施設の季節装飾なども行なっている。クリスマスツリーやお正月の門松の提案設置も担当の一つだ。
 「会社の温室に観葉植物を多数保管して、メンテナンスチームで手入れしつつ、貸し出しに備えているんです。最近は特にオフィスにみどりを取り入れたいというオーダーが増えていますね」。そう話すのは緑化装飾部の藤本太郎さんだ。今回取材で訪れたのは、大阪市北区の一等地にある会員制のワークプレイス「GVH#5」。大阪・関西を拠点に新たなビジネスの立ち上げを目指すスタートアップ企業が多数利用しているという。エントランスを入ってすぐ、そのみどりの多さに驚いた。共有のコミュニケーションスペースは、まるでガーデンカフェのようだ。
 「元々私たちも、ここまで大胆な緑化を考えていなかったんですが、阪神園芸さんに相談したら本当に素敵にしてくださって。利用者さんからも良い声しか上がってきません」。そう話してくれたのはGVH#5の管理担当者、阪急阪神不動産株式会社の津田知華子さんだ。オープンしてから5年、利用者はどう感じているのだろう。

みどりに囲まれて働く

 「みどりに囲まれたこの環境に惹かれて“入居したい”という方も多くて。また、エンジニアさんも入居されているんですが、ずっとパソコンと睨めっこしているので、ふとみどりに目をやれるというのはとても良いという声もいただいています。私も毎日管理のためにこちらに出勤しているのですが、ここでみどりに触れていると、家の中にもみどりが欲しくなって。今では家にもたくさんみどりを置いています」と話す。
 藤本さんに聞くと、緑視率という視界の中にどれだけ緑が占めるかという指標では、10〜15%程度みどりがあると人の心が落ち着くという統計に基づき、導線や日当たりなどを考慮した緑化提案を行なっているという。「新型コロナウイルス感染症の影響で、外に出ることがなかなか難しい昨今。在宅勤務が増えたり、オンライン会議などで事務所に長時間籠ることが増えていると聞きます。そんな長時間を過ごす場所を、みどりの景観で癒しの空間にしていきたい。そこは我々、緑化装飾部の得意とするところですし、これからの時代さらに求められる部分だと思います」と熱く語る。

メンテナンスでは水やりや傷んでいる箇所の剪定、葉についた埃の除去などを実施。弱っているものがあれば交換するなど、お世話しながら状態をチェックしている
メンテナンスでは水やりや傷んでいる箇所の剪定、葉についた埃の除去などを実施。弱っているものがあれば交換するなど、お世話しながら状態をチェックしている

みどりに囲まれて暮らす

 もちろん“暮らし”のシーンでもみどりの重要性は高まってきている。「以前は植木が部屋に置いてある感じだけで良かったのが、最近はインテリアとしてグリーンを多用されることが増えてきました」。そう話すのは緑化装飾部の久冨美納さんだ。阪神園芸の地元・西宮のマンションのモデルルームの植栽提案を担当している。
 「インテリアの中でも植物の重要度が高まってきているんじゃないかと思います。植物があるとお部屋に入った時に安心感や癒しが得られるんですよね」と、にこやかに話す。
 取材で訪れた「ジオ西宮北口マンションスクエア」の一室にも、たくさんのみどりが飾られていた。所長の牡丹久悦さんも「今回のコーディネートはみどりにかなりこだわっていて、家の至る所にみどりを感じられるようにしています。みどりがあることで実際に住まわれてからのイメージもつきやすいと好評です」と話す。
 新型コロナウイルス感染症の影響もあって、働く“場所”の自由度はさらに広がり、“暮らしの質”にこだわる人も増えてきた。みどりはそんな人々の営みを傍で癒してくれる存在に違いない。

ジオ西宮北口マンションスクエアの一室。至るところに緑が配された癒しの空間
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