生徒たちの憩いの場
緑地管理部の現場は多岐にわたるが、中でも「好文学園女子高等学校」での植栽管理は少し特殊だ。
まず校門をくぐってすぐそのみどりの多さに圧倒された。校門のすぐ側には芝桜の中にウッドチェアが置かれ、校舎にぐるりと囲まれた校庭は一面の天然芝。校舎から体育館へ向かう道には、色とりどりの花とみどりに囲まれた庭園も整備されていて、まるで植物公園だ。
「こちらの学園さんとは“共同”で植栽管理をさせていただいているんです。先生と生徒さんたちで“エコ緑化委員”をつくっているんですが、芝刈りは先生が、除草や水やり、肥料散布などは学生さんを中心に行なってくださるなど、とても緑化に力を入れているんです」。そう話すのは笑顔がチャーミングな緑地管理部の田中智子さんだ。
特に、天然芝の校庭は生徒たちの憩いの場。気候の良い時季は、お昼休みにレジャーシートを広げてお弁当を食べたり、放課後にバドミントンをしたりして楽しんでいるそうだ。「こんな素敵な校庭で高校生活を過ごせるのは羨ましくもありますね」と田中さん。
なぜこのように緑化に力を入れているのか、延原観司理事長にお話を聞くことができた。
環境が気持ちを明るくする
「2007年にこの学園の理事長に就任したんですが、そのとき校庭は土のグラウンドで、放課後の部活の時間以外は誰も校庭に遊びに出ない。学園を見回しても多少の木々はあるけれど、花はないですし、とても殺風景だったんです。本校は女子校ですし、学生のメンタルヘルスにも力を入れていこうとしていましたので、思い切って緑化を行うことにしたんです」と延原理事長。“花とみどりと音楽と”をキャッチフレーズに、生徒たちが憩えるみどりと花のスポットを作りたいと阪神園芸の知恵を借りた。
校庭は一面天然芝にすべく、教員や生徒と一緒に芝の種を蒔いたという。それをきっかけにエコ緑化委員が立ち上がり、除草や肥料散布、水やりも教員と生徒で積極的に行なっているそうだ。
それから10年ちょっと。池や庭園、ビオトープなどの増設も進み、学園内のみどりは格段に増えた。「環境が良いと気持ちが明るくなる、前向きになるというのは間違いないので、この緑化が本校の生徒、学園全体に与えている影響は極めて大きいと思います」と理事長。
みんなが癒される場をつくりたい
また、数年前に移設・再整備した庭園には、デザイン室も深く関わっている。
「この庭園は2015年に卒業記念で寄贈されたものなんです。それが新校舎の建築にあたって、一部資材置き場になっていたこともあり、2019年に復旧・再構築することになって」。そう話すのはデザイン室の鈴木園子さんと京坂知子さんだ。「森の中を散歩しているような、そして日常を少し離れてみどりの中でくつろいでいただけるようなイメージでつくらせていただきました。また、みどりが増えたことでトンボがよく来るようになったからと、卵を産めるビオトープをつくらせてもらったり。生徒さんたちに楽しく使ってもらえていたら嬉しいです」と笑う。
管理に入っている田中さんも「去年、校庭にひまわりを植えさせてもらったとき、先生から“きれいに咲いたよ!”と写真を送っていただいたこともありました。みなさんに喜んでいただけるととてもやりがいを感じます。大学が建築学科だったので、建物が映えるという面でもみどりはとても大事だと感じていますし、そして何より癒される。私も癒されながら毎日仕事しています。今後もみどりを取り入れつつ、みなさんがほっとできる憩いの場をつくれたらなと思います」。そう、大輪の笑顔で答えてくれた。