想いが形になるまで。
営業本部・デザイン室 / 造園工事部

この場所の“これから”を想像して描く

 阪神園芸は造園業には珍しい「設計・施工・維持管理・運営管理」の4つの機能をもつ。その最初の一歩、お客様の想いを汲み取り形にしていく設計部門が営業本部・デザイン室だ。公園やマンション、商業施設の造園や植栽など、みどりに関する設計・デザインを一手に担っている。そんな部門で一番のベテランスタッフが顧問の作間愛生さんだ。勤続40年、これまでデザインしてきた施設は数えきれないという。
 「最近はCGでデザインする人がほとんどですが、私はずっと手描きのデッサン一本です。手描きの方がみどりの温かみがあって、全体のイメージが伝わりやすい気がして…。お客様の想いや、この場所がどんな風に使われていくのかを想像して、形にするためのアイデアデッサンを出す。それをお客様、設計や土木、整備の人たちと意見を出し合いながら具体的に一つのデザインに落とし込んでいくんです。設計や予算など、いろんな制約のなかでより良いプランを立てていくので、何枚も描き直します。1年に100枚以上は描くかな」。色鉛筆を走らせながら話す横顔は、なんだか楽しげだ。

迷いなく筆を走らせる作間さん。
デスクには愛用のカラーマーカーと色鉛筆がずらり

大切にしているのは、
建築と人とみどりが馴染むこと

 「私たちの役割は、建築と人との間をみどりで取りもつこと。植物を建築にいかに調和させていくか、そこを大切にしています」。そう言って作間さんが連れて行ってくれたのは、とあるマンションのエントランス。ヨーロッパ調の建築にみどり豊かな庭園がとても馴染んでいる。JRと地下鉄の駅に続く出入口もあるからか、人通りも豊かだ。「ここは以前は地下に続くコンクリートの通路だったんです。無機質なものが見えないようにしたいとの要望をいただいてデザインしました。重量の関係で土壌は深さ50センチまでという制約があったんですが、その中でどのようにみどりを取り込んで空間を心地よいものにするのかに注力しました」と作間さん。今では近くの保育園の子どもたちが散歩に来たり、お昼休みはオフィスワーカーがお弁当を広げてくつろいでいたりと憩いの場所になっているという。目を閉じ耳を澄ますと、やわらかな風が頬を撫で、鳥のさえずりや木の葉の揺れる音が聞こえてくる。「無機質な建築物と人との間にみどりが入ることで一つに馴染んでいる。そんな心地よい空間が良いですよね」。作間さんの言葉に深く頷いた。

「デザインをする前は現場の周りを何度も歩くんです。
何か美しくないものが景観にないか、どこにみどりを入れたら良いか考えながら」と作間さん

ゼロをイチにする仕事

 デザイン室からのバトンを受け取るのが造園工事部だ。デザインや図面と現場を照らし合わせて測量を行い、位置や高さに問題がないか、工事に必要な材料や備品が揃っているか丁寧に確認。監督として工事現場に立ち合い、安全に間違いなく工事が進んでいるかを確認するのも業務の一つだ。「デザイン室や造園工事部の仕事は、何もない“ゼロ”のところから“イチ”をつくり出すのが役割。想いがデザインに落とし込まれて、そしてそれが立体になるところを間近に見られるのは、造園工事部の仕事の一番の魅力ですね。と言っても自分はまだまだ未熟なので、勉強の毎日です」。そう話すのは、部門期待のエース・梅田正太郎さんだ。
 行なっていたのは伊丹空港のほど近くにある緑地公園の遊具設営。カラフルな遊具のパーツが職人さんたちによって手際良く組み立てられていくのは、見ていてとても気持ちが良い。造園工事部ならば植栽工事だけかと思いきや、こういった組立工事も行っていることはあまり知られていないだろう。
 「今回は組立工事ですが、土台となる基礎工事も行います。雨水を流す管を勾配を見ながら通したり、コンクリートの構造物をつくることも。自分はどの工事も好きですが、植栽工事で見栄えがどんどん良くなっていくのを見るのも好きです」。

設計図をもとに、実際に現場に落とし込んだ際の相違点がないか確認。現場監督歴2年目の梅田さんは「まだまだ勉強中の身」と話す

いろんな人が憩い、
癒される場所に

 阪神園芸は設計から施工、管理までを一貫して行なっているところも魅力の一つだろう。デザイン室での設計をもとに工事部が測量し、実際に工事にうつる前に改善点を互いに調整できる。社内で植栽の維持管理業務も請け負っているため、”この日照条件ならこの樹木”など、経験値をもとにそれぞれの環境にあった植栽提案ができるのも強みだ。
 「阪神園芸は公園工事や広場工事など、賑わいを創出する場所を依頼されることが多いんです。この公園もいろんな利用者さんがいらっしゃって。朝や夕方だとご年配の方がお散歩にこられたり、週末はお子様連れのご家族がこられて遊具で遊んだり、空港が近いので飛行機を見にこられる方も。完成したこの遊具でもたくさん遊んで欲しいですね。そして、これからも老若男女いろんな方が憩い、癒される、そんな場所をつくっていきたいです」と笑顔で話してくれた。
 その数週間後、工事が終わった公園を再び訪れた。そこには遊具で楽しそうに遊ぶ子どもの笑い声と、やさしく見守る家族の笑顔に満ち溢れていた。

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甲子園球場のナカとソト。
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